33歳の俺が最近できた19歳の彼女を題材にして愛について本気出して考えてみた 3

「来て欲しい? だったら来てくださいと言いなさい!」
「ほーら、はやく言いなよ、来てほしいんでしょ? 来てくださいってはやく言いなよ!」
 と彼女がLINEを送ってきた。若気の至りだろう。つまらない。滑っている。面倒臭い。古い。目的もわからない。

 若者のコミュニケーションは平気で悪口が飛び交う。汚い言葉の連続で成り立っている。俺も昔はこういう言葉をよく使った。お互いがどこかで嫌な気分を覚えても、それでも悪口を上乗せして連鎖させていくコミュケーションだった。20代半ばから、こういう言葉に敏感になり固く禁じるようにしている。
「ほーら、お嬢の到着だぞーー!」
 着いたらしい。この時点で、俺はなぜこの娘とこれから遊ぶのかわからなくなっていた。
 電話がかかってきた。
「着いたんだけど、どうすればいい?」
「マンションまで20分ぐらいかかるけど、歩けそう?」
「わかんない」
「迎えに行くよ」
「どれぐらいかかる〜?」
「15分ぐらい」
「無理、走ってきて」
「走ってもどうせ信号で待たされるから15分ぐらいはかかる」
「無理」
「無理ならじゃあ今日はやめにする?」
「うざ」

「走ってきて」「うざ」これらの言葉が深く俺の胸を貫いた。頭もカーっと熱くなって、一瞬犯罪者のような顔つきになっていたと思う。馬鹿馬鹿しい。ここまで口が悪い女も珍しい。
 確かに今日は会う予定はなかった。突然、彼女が俺の駅近くにいるというLINEを送ってきたので、じゃあ会おうかと言ったのは俺だ。急といえば急なので、あまり段取りが出来てなかったのは確かだけど、これがカップルの会話だろうか? 汚い言葉を罵り合いながらバランスをとっているカップルはいるかもしれないけど、これは度が過ぎてないか? 本当に人間関係の距離感がわからない娘だ。学校で友達がいない理由がよくわかる。ビーズクッションに寄りかかるときの態度で俺に迫ってくる。
 俺は断る勇気がなかったのか? それとも彼女に会いたかったのか? 律儀に約束を果たそうとしたのか? 待たせたら悪いと思ったのか? よくわからないけど走った。19歳の女にボロクソに言われながらも駅まで走る33歳なんて、この世の終わりだ。これを優しさといってはいけない。
(今回は見逃してやる! 次やったら絶対行かねぇからな……!)
 と思いながら走った。

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 到着すると、彼女が駅前の噴水の広場で座って待っていた。彼女の顔が般若みたいに見えた。元々頬が出っ張っているのと、皮膚のアレルギー持ちのために肌が浅黒いから、余計怒っているように見えた。無神経で自分の時間軸の中でしか生きられない人間の顔をしていた。俺はこの顔を見るために一生懸命走ってきたのだろうか。
 不機嫌な顔をしていると神に愛されない。こういう顔をしている人間は、運もツキも全てから見放される。いつも愚痴や悪口や汚いガスを周囲に撒き散らす人間ほど、愛を求めているのは分かっている(愛を求めているからそういう態度を取る)。この娘はもともと重篤な持病を抱えているけれども、そういう病気もこの娘の心的態度が招いたものだと俺は考えている。神に見放されているのだ。いつもプリプリ怒っている人間ほど太りやすく健康を害しやすい。おそらくこのままでは非業な死を遂げるだろう。
 走ってきた俺に対して彼女が言った一言は「お魚食べたい」だった。スーパーに行って、お魚売り場で彼女がお魚を手に取ったので、俺はそれを取ってカゴにいれてやった。お礼を言わず、自分の家の廊下を歩くような足取りでレジに向かっていった。f:id:simaruko:20190606143942j:image

 俺のマンションに着くと、彼女は靴を脱ぎ散らかして勝手に上がっていった。俺は自分の靴と彼女の靴をドアに向くように整えた。彼女はそれを見る様子もなく奥にあるソファーに座り込んだ。ソファーに座ってお刺身を食べたあと、一緒に買ったはちみつレモンを飲み終えた。そして何も確認せずに俺のゴミ箱に捨てた。
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 以前、この部屋で鍋をやったとき、彼女に調理の全てを任せたのだが、「できた〜♪」と言って二人で仲良く囲んで鍋を食べた後、キッチンを見たらこんなことになっていたことがある。
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(居酒屋でアルバイトしてると言ってたけど、キッチン担当じゃないことは確かだろう)

「トイレ」と言って彼女はトイレに行った。その後、ビチャビチャと小便の流れる音が聞こえてきた。いつものことだ。女というのは(男でもそうかもしれないが)、一旦水を流して流水音に紛れ込ませて用をたすものじゃないだろうか? 19歳でも女の子なら全員知っていることじゃないのか? さすがにこれを注意するのは無理だ。母親ぐらいしか注意できるものではないが、おそらく、母親も同じことをしているんだろう。

 細かいだろうか? いちいち彼女のマナーの悪さを細かく観察してグチグチ言うのは最低だろうか? 気持ち悪いだろうか? さっさと別れろよと思うだろうか? 一つ一つのクオリティーが高くて無視できるものではない。俺の観察力が高過ぎる訳ではない。
 実は、なんでこんなに細かい描写が可能かと言うと、リアルタイムで書いているからだ。まったくクソ男である。彼女とデートしながら彼女の悪口をスマホでフリック入力しているのだ。こんな恐ろしい彼氏が世の中にいてたまるだろうか……! 女も女なら男も男だ。そしてこの男は、早く彼女に帰ってもらって、ちゃんと丁寧に続きを書きたいと思っている。
 なぜこんなことをしてるかと言うと、彼女が鈍感だからだ。彼女はずっとスマホでインスタを見ていて、自由気ままな空気を出しているので俺はそれに甘えている。俺はデート中は絶対にスマホを見ないと決めているけど、もうこの女の前ならいいやと思ってしまった。だからといって、目の前で目の前の人の悪口を綴るというのは人間としてどうかしているとしか思えないが。
 しかしなんで一緒にいるのかわからない。人間が違いすぎる。彼女とはもうこれで4回目のデートだけど、最初の3回はまだ空気が良かった。お互い気を張っていたからかもしれない。俺の方も頑張って話題を提供したり、褒めたり、気持ちの良いデートになるように心を砕いたけど、今日はお互いがいい空気にしようと働こうとしない。そのせいか元々の相性というものがよく表れている。
 これは何を意味しているかというと、多少相性が悪くても、お互いが、あるいは片方が頑張れば一時的にはどうにかなるということだ。既にセックスも果たしている。たとえ相性が悪い2人でも頑張ればセックスまでたどりつけるということを意味している。

 あなた達は自分の彼女をグチグチ怒っている男を見ると、それが正論だとしても心が狭い男として見る。そんな男は彼女を持つ資格はないと言うだろう。
 では、ここで考えてみてほしい。今、上に挙げたものをたった一つでも欠いてしまったら、人として恥ずかしくないだろうか? あなた方はこれらのたった一つの過失を犯したことがあるだろうか? 別にいつもニコニコして話題を振れと言ってる訳ではない。もっとずっと当たり前のことを言っている。例え長年付き合っていたとしても、靴を脱ぎちらかして家の主人より先に上がっていってソファーに座り込むだろうか? ちなみにこの子は家の前まで送ってもらっても、お礼の一つも言えない。「じゃあね」と言う。じゃあねじゃねーだろ! ありがとうございますだろうがッ! 犬畜生がッ! ちなみに俺が女だったら相手の車が見えなくなるまでずっと頭を下げ続ける。まぁそこまでしろとは言わないけど。

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 いつも無口だけど、今日の俺は自分でもやばいと思うぐらい無口だった。何も言葉が出てこない。デート開始からずっとイライラしていて、もう顔も見たくないし話したくもないと思っていたからかもしれない。でも、特に慌てる様子もなく、悟ってしまったところもあった。ここが俺と彼女の行き着く先だと思った。
 相性が悪いので、俺と彼女の落とし所が見つからないのである。見つからないのではなく、存在しないのである。彼女にムカついてイライラするから話さないのではなくて、慣れて自然体になった時、お互いの中に共通点が何もないから何も話せないのである。
 残念なことに確信してしまった。俺はもうずっと一人だ。孤独が板についてきた。前から思っていたが、俺は永遠に一人だ。女を取り替えても同じことが起こる。女はどれもこれも全員同じ馬の骨だ。そしてこの孤独の闇は日に日に広がっている。ブラックホールより早く広がっている。
 一緒にいても何も言葉が出てこない。そして俺自身も慌てるつもりもない。本当にただじっとしている。それが彼女にとっては困ってしまうものだったらしい。「何か話して」と10回ぐらい言われた。いやもっと、30回は言われたかもしれない。不良少女と音の出ないガラクタがデートしている。

 本当に言葉が汚い。言葉が汚い人間ほど愛情に飢えていることは知っている。俺も言葉が汚すぎて友達を失った過去があるからよくわかる。本当はその友達が好き過ぎるからそういう態度をとったのだ。うちの母親もヒステリックだ。本当に怒り出すと、相手の精神を破壊するまで止まらない。「封筒は手で破かないでハサミを使いなさい! その封筒の破り方があんたの失敗だらけの人生を表してるよ!」「私があんたほど若かったら、バイトしたり旅行したりするもんだけどねぇ……! あんたって本当に何もしないよね! いつもベッドの上に座ってるだけ!」
 だけど、平気で人を傷つける言葉を吐いたり、常に怒ったり気性が激しい人ほど愛を求めていることはわかっている。よく知っているくせに、俺は彼女を包み込めないでいる。包み込めないどころか目の前で悪口を書いている。どうしても琴線に触れてしまうのである。

 どうして俺ばかりがこんな目に? 神様、普通の彼女をください! なんでこんな不良少女なんですか!? ピアスがいっぱい開いてるんです! どうして愛や恋について一生懸命考えてきた俺に普通の彼女をくださらないんですか!? 口が悪いし般若みたいな顔をしているし重い病気を持っているし、いいところは19歳ってところだけじゃないですかっ……! これだったらまだ27歳の銀行員の方がいいですよ! 俺がこれまで悩みに悩み抜いた分量に等しいだけの彼女をちゃんと提供してください! 差別してもらっては困ります! 他の男も女もそんなに苦労していないじゃないですか! 俺の方がずっと苦労しているじゃないですか! それなのにみんな、普通に付き合えて、普通に結婚して、恋の階段を登っていっているじゃないですか! 周りは子供のことや住宅ローンの問題にとっくに移ってます……! 僕だけですよ!? 33歳にもなってこんな大学生みたいな問題で頭を抱えているのは……! 次にいかせてください! 可愛い彼女ができないと次にいけないんです! どうして俺だけが恋というものを十膳に味わえないんですか!? いつもこんなつまらない恋ばかりじゃないですかッ! いや、恋と呼べるようなものなんて1度もありませんでした! くだらないですよ全部! もう殺してください!

 確かに俺よりもっと劣悪な環境にいて、いままで付き合ったこともなくて、童貞で、出会い系で誰1人マッチングできない人もいる。30後半の人間なんて、そんなのが山ほどいるだろう。
 基本的に俺は、顔はよくて性格もよくて霊的修行を通じて神との一体化を目指している、日本でも珍しい敬虔な人間なのに、どうしてこんなことになっているんだ?
 よく分からない。顔も性格も大したことがなくて、金がなくて、無職なのに、女を連れている人間はいる。モテる人間はどこで何をしていてもモテる。有吉だってどんなに惨めな状況に追い込まれても、いつでもモテたと言っている。世にでる傑物は、どこで何をしていても絶えず女が付いて回る。俺はその種の人間ではないらしい。
 今、俺が苦しんでいるのは現在が辛いからではない。俺はこの女と別れたとしても別に悲しくもない。むしろ良いことだと思っている。それよりも一番苦しいのは、未来の可能性が閉ざされたような気分になっているからだ。出会い系をやり続けても、こんな出会いしかないような気がしている。こんなことを繰り返すだけだと思っている。またマッチングして付き合っても、一生懸命走らされてお魚食べたいと言われるだけのような気がする。
 出会い系の女は全員クソだと思っていたけど、やっぱり本当にクソだった。本当にまともな人間がいない(俺も含めてな……!)、そして、出会い系でまともな人間がいないということは、出会い系しか頼るものがない俺としては万事休すなのである。俺はこの未来に絶望している。
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 たとえどれだけ可愛くても、たとえ橋本環奈ちゃんだとしても、駅まで走らされてお魚食べたいと言われたり、靴を脱ぎ散らされ、言葉遣いが悪くてイライラさせられると、とてもセックスしたい気分にならない。
 薄々感づいていたけど、結婚しないんじゃなくて結婚できない人間なんだ俺は。人間は似た者同士と付き合う。むしろ人間は似た者同士でなければ付き合えない。まともに長話ができる友達なんて1人だけだ。そいつが死んでしまったら、俺はまともに人と話すことが全くなくなる。そいつは俺と本当によく似た人間だ。やはり人間は自分とよく似た人間としか上手くいかない。しかし、こいつは男だから結婚するわけにはいかない。
 俺とよく似た女としか結婚できないとしたら、そんな女どこにいるんだろう? たぶん世界のどこを探してもいないだろう。俺ほどの人間は珍しいだろうからね。もう終わりか。恋愛は諦めろということか。結婚も、全て。

 俺が精神世界の道を歩いているなら彼女は物質世界の道を歩いている。お互いが、精神の中に物質を、物質の中に精神を見出さないのであれば、これらの道が交差しないのは当たり前かもしれない。
 俺はいつも付き合っている時に、何で付き合ってるのだろう? と思ってしまう。相手の顔が可愛いわけでも、性格がいいわけでもセックスしたいわけでもなくて、特に話したいこともなければ何を期待しているわけでもないのに、ついつい会おうとしてしまう。

 これは内緒なのだが、彼女の座るところを用意するために3万円のソファーを買ってしまった。そして今日も、このソファーを見つめながら、彼女がソファーに座ることをワクワクしながら、彼女をこの家に呼ぶことを楽しみにしていた。そのくせ、こうして会えば、はやく彼女が帰って欲しいと願っている。
 こんな風に期待と現実が異なるのは、今まで彼女がいなかった分の埋め合わせをしたくてはしゃいでいる結果だと思う。自分の所有物の女が目の前にいる安心感が欲しいのだと思う。車やマイホームと一緒で、なんとなく所有していたいだけなのだ。実際付き合ってみれば大した幸せはない。むしろ邪魔に思う。これは付き合う度にいつも思うことだ。

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 ソファーを運んだせいで、腕が思うように動かないと言っているのに、マッサージやってと言われてマッサージをやったら、お礼の一つも言わなかった。一体どういう育ちをしてきたんだろう? 親の顔が見てみたい。友達がいないのもわかる。高校でも専門学校でも1人も友達ができないというのは異常だ。俺には理由はわかるけど、彼女が自分で理解する日は訪れるのだろうか? みんなが醸し出す無言の圧力に気づかないのだ。みんな教えてくれている。無言でいつも教えてくれているけど、彼女は気づかない。今も俺は無言で語っているが気づく様子はない。
 鈍い。鈍すぎる。鈍すぎるから鋭すぎる俺とこうして一緒に過ごすことができるんだろう。

 ただでさえ重篤な持病を抱えていたり、色んなハンデを背負っているのに、それでも周りから嫌われてしまうのは本当に可哀想だ。この世界は、いつもいろんなことに気づいている人間だけが運が良くなって救われる仕組みになっている。
 本当に彼女は鈍感だ。色んなことに気づかない。身体の声も聴こえないから、いつも身体の節々が痛いんだろう。周りや、自分の声も聞こえないから、いつも不貞腐れた般若みたいな悪い顔をしているんだろう。常にイライラしていて、うざいとかだるいとか汚い言葉を吐いてしまう。注意しても、「口癖になってるんだよねぇ~」と言って直さない。自分で自分の人生を悪くしてしまう。

 俺と彼女が出会ったのは神が与えた試練なのか? 俺はこの子を通して成長し、彼女も俺を通して成長するのか? 俺は彼女の成長を促さなければならないのか?
「神の試練」と思われながら交際されるなんて死ぬほど嫌なことだろう。俺だって嫌だ。神の試練というより忍耐の試練というべきか。こんなことはいつだって職場でも家庭でもどこでも行われている。
 みんなよく頑張っている。俺はいつも1人だから気楽だ。「なんでこんなこと平気で言えるんだろう!」という人間と同じ空間にいて、一日中そんな人間と戦って戦って戦っている人ばかりだ。その相手が自分の愛した人だったりすることもあるだろう。
 恋人までもそうある必要はない。このまま我慢し続けるべきか? それともこの関係を続けることで、俺は、そして彼女は、新しい境地に至れるというのか?
「ピアスを20個開けたい」「髪をピンク色にしたい」「暇さえあれば推しのインスタ見てる」「タトゥー入れたい」そんなことを言われる度に、違う人種だなとは思ってしまう。うんこする度に「うんこなう」というLINEを送られてきて、目が廻った。
 そして今度はタトゥーではなく、なんとかアートとやらをやりたいらしくて、このカエルさんを体に描いてほしいのだという。

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 そしてこの柄も胸に描いて欲しいと言っている。f:id:simaruko:20190606144620j:imagef:id:simaruko:20190606144630j:image
 おそらく俺が3つも4つも一生懸命一日かけて描いたとしても、お礼の一つも言わないんだろう。
 そして俺は「こういう時はお礼を言わなきゃダメだよ!」と小学生を諭すように言って彼女を不機嫌にさせなきゃいけないんだろうか? 直らないのに? 不機嫌にさせるだけなのに? 俺も不機嫌になるのに? ただお互いが嫌な気持ちになるだけだ。マザーテレサはこういうときどうするんだろう? 山岡鉄舟やガンジーはどうするんだろう? 少なくとも彼女の学校のクラスメイト達はみんな拒絶したようだけど。

 何より一番腹が立つのは俺自身だ。愛されるより愛することができる人間になろうと戦ってきた。これだけしたのだから、お前もこうしろとか、相手に見返りを求めるような、完璧を求めるような、そんな人間にならないようにしようと勉強してきたはずなのに、全てが壊れていく。彼女に変わってもらいたくて期待している。期待を裏切られて苦悩する。期待を持つことがよくないのか? いい人間にさせようとしているのではなくて、自分好みの彼女を創り上げようとしているのか? 彼女のありのままを愛せない自分に腹が立つ。

「何か話してよー!」に一番腹を立ててしまう。自分からは話題を振ろうとしないくせに「何か話してよー!」と言う。確かによく無言になる人はいる。しかし目の前の人が無言になって静かにしている時、「何か話してよー!」という人は、世の中には子供とこの娘しかいない。そういう時は、(ああ、今は話したくない気分なのかな?)と思って、自分も黙って落ち着いたり、別のことをしたり、あるいは自分から何か話題を振ったり、そういうことをするはずだ。
 彼女は「なんか話してよー!」と言うだけだった。しかし1つ良いことを言うのであれば、そのまま俺が話さないでいても、怒ったり、距離を感じて身を引いたりすることもなかった。ただ雑音のように「何か話してよー!」と繰り返すだけだった。そのあたりも子どもだ。あまりにも子供すぎて、鈍感すぎて救われている。普通だったら、(こんなに黙って静かになってしまう人間は無理だから、今日はこのままやり過ごして次は会わないようにしよう。もっと話してくれる男にしよう)と心に決めるだろう。
  ずーっと思っていたけど、彼女は別に俺を求めていない。俺の特異性を求めていない。俺と他の男の区別もおそらくあまりついてはいない。友達がいないから自分と一緒にいてくれる人間を求めている。俺も、33歳の俺を相手してくれる女の子は19歳どころか20代後半でもいないため、もう2年以上まともな恋愛をしてなくて寂しいから、はっきり絶縁しようとは思わないのだ。

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 これまで数回にわたって、この19歳の彼女の話をしてきたけど、これらの話をまとめて友達に電話で話したところ、返ってきた言葉が、
「本当に斜め上から見てるなぁ。お前は」
だった。笑ってしまった。確かにその通りかもしれない。本当に斜め上から見ている。そして「斜め」上という言葉が言い当て妙だな思った。確かに「斜め」上なのだ。なぜ傾斜がついているのかよく分からないが、確かに傾斜がついたような斜めに穿った角度で相手を馬鹿にしている。
「もしこの娘が自分の子供だったらちゃんと世話をしようと思うのか? しかしもし自分の子供を愛するように世の中の人間を愛そうと考えるならば、その考えこそがキリストやマザー・テレサの域のレベルだとしたら、それが愛だとしたら、そして俺自身が愛の探求者だと自称するならば、ここは諦めずに戦うべきところなのかな? でも、やっぱり、その考えは失礼なのか? 結局そんなところをぐるぐる回っている」
「そんなことをぐるぐる考えながら、神の試練とか思われながら付き合われるのは嫌だなぁ……俺は。お前がその娘と付き合ったってことは、どこかで納得したから付き合ったんだと思うよ。ブスだったら、お前は絶対付き合ってない」
 
 彼女にとって恋愛するということは娯楽でしかない。当たり前だ。恋愛とはそういうものだ。それでいいことに違いはないが、人間と人間の付き合いだ。マナーがある。
 世の中は本当に馬鹿な人間で溢れていて、学校でも職場でも近所でも本当に馬鹿しかいない。彼女はそんな馬鹿と比べても更にもっとずっと馬鹿な人間だ。どうして俺はそんな女と付き合うんだろう? 本当に参ったもんだ。目の前の人間が全員バカにしか見えないから、まともに付き合うことができない。愛や恋について一生懸命考えて賢くなって、ひとつひとつの扉を開けて進んでいく度に、どんどん馬鹿な女と差が開いて付き合えなくなってしまう。
 正直に忌憚なく言えば、俺は自分では第一級の思想家だと思っている。ヴォルテールやバルザックやドストエフスキーにも比肩すると思っている。ひろゆきやホリエモンより俺の方が偉いと思っている。もし俺が本当に第一級の思想家だったら、この女と釣り合うはずはない。バルザックがこの女と付き合うはずはない。格が違い過ぎるのだ。しかし第一級の思想家ならば、こういう女の子の中から本質を見出して、幸せにすることができてしまうのではないかと思うのだ。そこが問題なのだ。だから無視して通り過ぎることができないでいる。
 第一級の思想家とは、全てのブスや格式の低い女から本質を見出すことができて、相手の幸せを見つけ出して、自分も幸せになることができる人間を言うような気がする。人を選ばないのだ。誰とでも楽しく過ごせてしまう。第一級の思想家の基準も定義もめちゃくちゃで俺もよくわかっていないけど、そんな気持ちで、この問題と格闘せずにはいられないでいる。

 みなさんは、「ていうか、お前一体何なんだ? どんだけ話さねーんだよ! 目の前に彼女がいるのに話さないって一体何なんだよ!」と思うかもしれない。それには一応理由がある。誰も納得しないだろうけど、譲れない理由がある。
 俺は話すとき、言葉が降りてこない以上は話さない。ずっと沈黙していて、心を静かにして、ピカーンと言葉が降ってきた時にだけ、その言葉を話す。その言葉が降ってこないのに話そうとすると、自分の心がぐちゃぐちゃにかき乱れていく様子がわかり、その状態が望ましいものとは思えないのだ。だから、無理やり間を繋げようとして、言葉を探す旅に出るということはほとんどしない。
 天から降ってきた言葉を神の言葉と考えていて、その言葉だけが重要だと思っている。言葉がたくさん降りて来た場合は、遠慮なく凄まじい勢いで話す。このブログの記事も、天から降ってきた言葉だけを話しているつもりだ。(その割にアクセス数が少ないのはなんでだろう?)

「すべての存在は苦痛に満ちている。彼らは苦痛のなかにいるから、快楽のなかに解放を探している。彼らが想像しうる幸福のすべてとは、繰り返される快楽の保証なのだ。苦痛からの一時的な解放を快楽と呼ぶ。幸福と呼ばれる終わりなき快楽を期待して私達は空中に城を築く」

 自分の心の中に暗闇が入り込んできたら、それを1回1回浄化する。消し飛ばす。そうやって心の玉を磨いていって、自分の心の中に一切の邪悪なものを寄せ付けない。そうやって心の輝きを守り続ける人間になることが人生の最も重要な使命ではないだろうか? これを成し得ることは金持ちになることや地位や名誉を得たり、大きな社会貢献をすることよりも重要であって、これを達成すること自体が大きな社会貢献を成すことの同義だと俺は考える。

 今、ひたすら瞑想している。どうすればいいのか。俺は彼女といる時どんな心持ちでいればいいのか。というものを探している。そして、たどり着いたのが、やはり瞑想である。自分の心を深掘していって、一番奥にある光にアクセスする。そしてその光と一体化し続ける。これしかない。それは別の角度から見たら、様々に浮かび上がる邪悪な思念を1つ残らず破壊していく様でもある。
 瞑想して、この状態で、とにかくずっと毎日をこの状態で過ごすことができたら何も問題はない。やはりいつだって俺と神との問題なのだ。この燦然と光る光と一緒にいれば、俺は幸せでいられるし、周りも幸せでいられる。

 どっちが悪いのか。俺が悪いのか。相手が悪いのか。俺はこれだけしたのに相手はこれすらしてくれない。俺はこれぐらいできるのに相手はこれすらできない。とか、そんな価値観や全てから解き放たれて、俺は静かに瞑想するだけた。これでいい。これでいくしかない。常にずっと光り続けるために、全てを捨てて、全てをなくして、ただ心の本源にアクセスする。親友と長電話していると、たまに意見が食い違って喧嘩してしまうことがあるが、その時もやはり必要なのはこの心的態度だろう。職場でも家庭でも、これしかないのだ。この彼女に関わらず、世の中の全ての出来事は、心の本源に辿り着くための試練でしかない。人間の生きる意味は、この心的態度を手に入れて自分と周りを幸せにすることにある。

「あらゆる問題を瞑想によって解決しなさい。無益な思索によらず、神との霊交によって解決するよう努めなさい。心の中から教条主義的神学の垢を取り除いて、その代わりに、直覚という新鮮な癒しの水を組み入れなさい。自分の意識を内なる案内人に同調させれば、人生のあらゆる問題に対する答えを聞くことができる。人間は、自分の身の周りに悩みや問題を作り出す天才で、次々と作っては飽くことを知らないが、神もまた飽くことを知らぬ無限の救済者なのだ」